小雨がぱらつく午後、
鉄骨検査を行うため鉄工所に赴く。
大阪の主要駅で構造の先生と少し早めに待ち合わせし、昼食をとってから行くことにする。昼食はうどんとした。神戸に事務所があり、また居住もしているのでよく感じることだが、正直、神戸のうどんは大阪よりすべての点において陥ちる。総じて出汁は旨味が引き出せておらず、麺もコシが少ない柔らかめの神戸のうどん。大阪に長年住んでいたので、神戸に越してきて近所のうどん屋に入った時、そのあまりのギャップに口に入れてすぐ箸を置いた記憶がある。そのショックを埋めるため、神戸から現場に行く際、足げく通ったこのうどん屋に行こうと私から誘ったのだ。庶民的で、吉本のセットのような造りのそのお店は、全体的な美味さにおいても並以上と思っていたが、食べながら構造先生曰く、
「麺は美味いけど、出汁はイマイチやな」
歯に衣着せぬ物言いは昔からなので慣れていたが、何か言わないと気が済まない風でもない極正直なコメント。自身の天ぷらうどんに少し入れすぎた七味が心にもしみる。
鉄工所へは、主要駅から約30分程度で到着。自然豊かな山裾にその鉄工所はある。鉄工所の事務所で早速製作上の留意点や製作図、また自主検査データ等のチェックを書類で行った後、実物のピースを確認する。書類は虚偽なく正しく作られていることを現物で確認するためだが、このとてつもなく重く硬い鉄が寸分違わず組まれている状態を見ると、いつも感嘆せざるを得ない。図面との誤差はほぼ無く、あっても数箇所、それも差異0.5mm以下でまとめてくる。この鉄骨が正確に組まれることで、地震等の荷重に対し、粘りとコシで対応するのだから不思議なものであるが、とにかく工場やそこに務める職人の方々、またその鉄工所を選択する元請けの判断力に敬意を表する。
構造先生は、そんな私を尻目にずかずかと現物をチェックし、あれこれと質問と指示を投げかける。自身の盲点を補うべく、実績と経験が物を云うとはこのことなのだろう。「麺は大方OK、後は出汁やな」。イマイチ、とは言われないようにしなければならない。
