完成矢先の9月4日、台風21号がこの地域を襲来する。
記憶の限りでは、敷地のあるこの地域でこれほど甚大な被害が出る災害は稀なことではないかと思う。
リアルタイムに現場と連絡をとり被害状況を確認。麻痺状態にあった公共交通機関を避け、車を借り現場を訪れたのは台風襲来の3日後となる。
家々には屋根にブルーシートが被せられその数も足りないという。急遽自治体がシートを配布することになり、配布時期等を知らせる町内放送が鳴り響いていた。道路の所々には、建物部材落下の恐れがあることから規制線が張り巡らされている。現場周辺は、停電状態は脱したものの、屋根や木片などかなりの量の飛来物が散乱してる状態であった。現場所長曰く、台風一過直ぐに周辺を片付け始めたが、これでもだいぶ片付いた方であるとのこと。今回の台風がどれほど強力で、またこれから益々その強さを増すであろうことと、人も居なくなり手を加えられなくなった建物や空き家が増えていくことを鑑みると身震いせざるをえない。敷地東側に建つ隣接建物は、その世相を表すかのような被害状況であった。

建築をほぼ作り上げ、あとは試運転や検査を残すのみとなった現場関係者にとって、気が気でなく満足に眠れもしない状態だ。現場所長は台風襲来の当日、出来上がった現場内部で寝泊まりしたと聞く。その間、現場も含め周辺は停電に見舞われたが、なぜかこの現場だけは復旧が早く、暗い地域にポツリこの建築だけが明かりを灯していたという。それを見た地域の人が、希望の灯のように見えたとわざわざ言いに来たらしい。そして不幸中の幸い、現場は被害を免れた。そんな様々な偶然を呼び寄せたものが何か、もちろん判りはしない。ただ、人あってからこその建築であり、それが地域や街を、果てには社会を形成していくのだと実感する。所長がここに泊まらなかったら被害に遭っていただろう(なぜなら、貴殿が居ない現場事務所の屋根は半分飛んでしまったから)、と半ば本音を心に思い、この建築には沢山の方に愛着を持って利用されつづけて欲しいと切に願う。
