建築をつくるということは、物質と向き合い、新たな”もの”をつくりだす至極物質の世界である半面、そのものがどう機能や効果を発揮し、人に感動を与えるものになるかなど、謂わば新たな”こと”をつくりだす領域も拡がっている。例えば、文章を書きながら行間を考える、またはその逆も然り、と往来しながらストーリーを書き上げることに似ている。建築と空間に言葉を置き換えてみると一理あると思う。また、建築をつくる職能とは、事業主の想いを素材と寸法に変換する術だといえるかもしれない。ただ、その前提となる想いを読み解くことこそが、建築をつくることの根源となり、最も創造的な部分になる。その部分は、上述の世界と術を統括しながら様々な要素に方向性を与えてくれる。

その想いの読み解きには、建築が示す普遍の(または、長い期間ある)要素を引き合いや判断材料にすることが多い。時間や歴史、季節や環境のように、この想いに至るまでに移ろい重ねられたもの・ことを、地層を見るように分析していく。その中にあって共通する根のようなものを発見することが大事につながる。要するに、これまでとこれからも変わらないもの・ことを見つけ、想像の根源とすることが肝要となる。”想いをかたちに”とは、世俗的な売り文句としての印象もあるが、事業者またそれを支える代理人にとって、至極神聖でなければならず、今回特にそれを意識する。
