ディーテイルトモノカイ 2017-09-11

「畢竟リアル」

 建築をつくる行為には、多種多様な要素を加工し組み合わせるという一面があります。

 それらの要素は、自ら特性をもつと共に、組み合わせによって他との関係やさらなる効果、価値を示しえるものになります。知識や経験にもとづいて、部位の役割を読み解き、そこに現れる様々な場面を想定しながらより望ましい全体像を技術的に構成していく。建築の一つの本質を根本的かつ端的に示し得るのが、建築の細部・ディーテイルだと私たちは考えます。

 陽をとり入れ、水を切り、熱や雨をしのぎ、風を通しながら美観や強度を保つなど、建築が示す形質的な側面と、素材の物性やそれを扱う職人の技能、工期や経済性など、建設行為的な側面とが犇めき合う建築のディーテイル。建築家は、その部分に対して、相当の知恵と経験、また速度でもって、現実的な想像と判断を繰り返し取り組んでいきます。こうしたディーテイルは、建築や空間の全体像を構成する言葉となり、総じてその本質を語り始めます。そこには、作り手の想いや能力だけでなく、条件や場所・時代の様相までも、直接、具に感じとることができるものです。

 近年、設計の現場でも情報化は進み、高度なシミュレーションや検討の高速化、建設工事への効率的なコミットは、大いなる恩恵と捉えることができます。部材だけでなく空間自体の性能も高度に情報・視覚化され、それを誰もが容易に知り得ることとなり、建築をつくる行為が単なる情報の選択となる場面が多くなりました。もちろん、この選択行為にも経験から生じる様々な思慮が加味されることに変わりはありませんが、この情報処理の中に、ふと建設行為との乖離を感じることがあります。

 この「ディーテイルトモノカイ」プロジェクトは、私たちの職能が、畢竟リアルを扱うものであることを改めて認識することから着想しました。建築家は、多くの条件や問題から全体のビジョンや理想像をつくり、それを現実化できなければなりません。現実化には様々な問題が立ちはだかりますが、その一つに、建築・空間の形質と建設行為とが織りなす物質のリアルを職能として熟知していることが挙げられます。このプロジェクトは、先達や未開の建築・空間ディーテイルの洞察を通じて、このリアルをより深く把握することから始まります。そして、築きあげられた建築や空間がもつ本質的な言葉を紐解き、現在や未来への翻訳を試みながら、職能の自己研鑽と共有を主な目的としています。