職人が昼休みをとり、静けさを取り戻すタイミングを見計らい現場に入る。
1階ホールの真ん中に、解体された住宅に使用されていた床材が戻る。この材料は、住宅の廊下に使用されていた厚さ15mmの桜の縁甲板で、多くの傷や経年の反り、幾度の塗装が示す深い艶からして、創建当初からのものであるとわかった。本工事により住宅は解体することになったが、この縁甲板は生け捕りにし、新たな建築に活用する計画とした。戻した場所は、施主である学校法人が初めて子供達を受け入れ、保育された住宅の居室位置を示している。ここは、法人ならびに関係者方々の礎となる場所であり、設計ではここを起点として全てを導き関係づける計画としている。いわば計画全体において根幹をなす場所であるといえる。

戻った床材が使われていた当初の廊下は、この位置から若干ずれている。厳密に言うと、この位置に元々あった床材はカーペットであり、その仕上げや下地の板材をそのまま活用することが本来と考えていた。でも衛生上の問題や、改変等によりそれらの材料が意外と新しく、「そのまま」を行ってしまうと、「残しただけの本来の姿」に成りかねず、残す意図がかき消されてしまう、また逆に、気軽に立ち入れない場所になってしまうことが予想された。ここは、これまで多くの記憶を蓄え、これからも訪れるだれもが同様に踏みしめ、佇み、使い込むことができる材料で再活用することが望ましい。そうすれば、子供を預かり見守ってきた先代の意図に少しでも近づくのではと考えこの材料に決定している。残すものの意図を汲みとり、心身的で身近な体験を生み出すものとして再利用することで、礎との関係をより深める記念のあり方になろうと思う。