完成まで1ヶ月をきり、現場は多くの工程でごった返す。
室内装飾の現場では必ずと言っていいほどこのような状態になる。材料、工具、工事のための配線類、仕上がっている造作、そして作業する職人の数々などなど。足の踏み場もなくなり、悠長にしていると何かに躓き、ぶつかり、傷つけ、そして謝る。現場に初めて足を踏み入れた時、職人から「コラぁそこ!」とドヤされ注意喚起されたものだ。正に張りめぐらされた緊張のカオス状態というものかもしれない。

そんな現場を注意深く歩き見しながら、納まりの要点として今回特に注意すべき箇所の施工が始まる。それは、メインエントランスから反対側にある外部開口部で、日常頻繁に人の往来が予測できる部分。現時点、そこには事前の耐震改修工事にて新しい開戸が設置されている。保育所という機能、また遮蔽物の少ない海辺の立地がもたらす強風への懸念を考慮するとその扉は引き戸であるべき、と左記工事の実施前から言い続けたが、調整虚しく設計通りの開戸が設定されてしまった経緯をもつ。明らかに危険なものになりうるその扉を今回撤去・保管し、少し部屋内側に新たな引き戸を取り付けることとした。

この部分には、耐震ブレース類と既存袖開口部が取合い、水仕舞いやバリアフリーの観点から求められる幅員やレベルの吸収と強度、耐久性と機能性、関連法規、美観などなど、多くの要素がひしめきあう。「建築の美しさは最も単純な解決のなかに潜んでいる」とは、ある建築家の名言だけれども、その言葉にあやかるべく、ここで成し遂げなくてはならない所作や空間を再度シミュレーションする。子供たちや親御さんたちが、安心して往来し佇むことができる勝手口。とてもシンプルなことだから、シンプルにこなし実現することが肝要とわかるが、さてさて、それを現実化しなければならない。