既存家屋の解体直前のこと。この絵は新しい保育所に飾りましょう、と園長先生から申し出があった。大きさにして畳一枚程度、綺麗な御召し物を身につけた童が優雅に遊んでいる絵画。恐らく、絵を飾って観てもらうのではなく、新しい場所になっても見守り続けて欲しい、との想いがあるのだろうと直感的に悟る。この要望を叶える場所を頭に描きながら、解体工事に入った。

工事には、当然工期があり、工事関係者はその期間に膨大な情報を処理しながら皆で建築を形作っていく。この工期中、どれだけの情報を処理すべきかを考えると、いつも気が遠くなるほど長く感じることがある。しかし、解体がほぼ済んだ現場をおとずれ、これまでの時の流れや培われた想い・記憶、完成後の建築の姿に想いを馳せると、それがほんの一瞬のこととわかる。建築行為は、まるでボタン一つで切り替わる分岐器のよう。この一瞬だからこそ、疎かにしてはいけない。
次は、運命共同体となるパートナー(施工者)選び。ほんの一瞬の中の一瞬のことのようだが、プロジェクトを左右する程の重要な分岐点といえ、いつも越すまで眠れない山場となる。
