冬の曇り空が広がる。
まばらだがそれほど差のない厚みの雲が一様に広がり、柔らかく連続する陰影のコントラストが、いかにも寒そうな天候を示していた。周りを住宅等に囲まれた敷地では、吹く風は少ないが、足元からじんわりと底冷えする感じを覚える。佳境に入った現場は、内外部共に多くの工事が一つづつ施工されていき、人と物で溢れかえる様相が継続している。さまざまな養生や物を避けながらあらゆる場所を周り、適宜職人と協議していくと、案の定、感じていた寒さは何処かに消えていく。そして、現場が佳境に入るといつも初めて担当した建築現場のことを思い出す。

ある種トラウマに近いものだからかもしれないが、現前していく空間を前にして、自身がどれほどその空間の形やおさまり方をイメージできていなかったか、初めての現場で痛切に思い知らされた。何も判っていないと職人や職方、現場所長に馬鹿にされ、何も言えない私を余所目に、工事がどんどんと進んでいってしまうのだ。これは決して暴走ではなく、コントロールできない自身の怠慢でしかないことを存分に知らしめられた。その証拠として、残る図面にその判らない部分の記載が一切ない、またはあってもちぐはぐの絵しか描けていないのだから仕方がない。その時から、描けないところは無いというところまでイメージし、シミュレーションすることを心掛けてきた。この今の現場では、おおよその部分に対して、頭でも手でも描けるところまで来たように感じる。しかしまだ「手に取るように」まではいっていないだろう。とにかく確認あるのみといえる。
