敷地に残る数多くのものは、これまで園が培ってきたもの、また先代の想いの証を大いに表出していた。そこに建替の計画を想定すると、当然それらを残すかどうか、方法含め検討する必要がある。保存することで、場所がもつ潜在的な要素を直に示し、活かすことにつなげようとの考えだ。既存の活用なのだから、検討を容易にすすめることができるのではと思いがちだが、そうするには先ず設計図や申請書など資料が残存しているかどうかにかかってくる。相当の時間が経過した建物では、その資料は無くなっているのが通例で、案の定、この既存建物についても同様であった。先ずは既存の実測・調査から始める。

今ある状況を整理すれば、自ずと判断材料がつぎつぎと揃う。市街地建築物法への遡及と現行法との擦り合わせ、構造的な担保、それらから導き出せる建設手順や工程の想定など、枚挙に暇はない。これらの判断材料は、事業主の計画に対する意図や想いを確認することにつながる。どう判断されてもその方針を須らく実現することが自身の生業であると再認識しながら、判断を仰ぐため理事長との協議に臨む。整理し集めた材料から、おおよその予想はついてもいたが、やはり古い物件を現在に活用することの困難さは大きく、それを克服するだけの労力や費用、時間は、いまの社会通念からかけ離れたものであった。敢えてそれを残すとすれば、そこにはまた違った風景ができていただろう。ただ、残さず新しいものをつくるという判断には、これまで培われたものに更なる想いが付け加えられたようにも感じた。先代からつづくかわらぬ想いを将来に繋げていくことがこのプロジェクトの肝要な部分であると悟る。
