ひと呼吸 2020-10-02

現場は年末を迎える。
屋根の上では、時折肌を刺すような冷たい風が吹き、日の温もりにいつまでも当たっていたいと思うようになる。屋根に登ったのは、外部足場がばらされる前に入念に確認を行うため、また時遅しだが、現場の邪気払いと御礼を兼ね、日の目を見なかった上棟の神具を屋根上に設置する目的からであった。屋根の隠し樋やトップライト、端部の納まりなどを重点的に見て回り、合間にふと広がる風景を見渡してみる。日常ではなかなか落ち着いて見ることのない眺望。一瞬屋根の下で行われている現場作業の風景を忘れ、物思いに耽ることを許されたような気持ちになる。少しの間、要らんかもなとおもっていた”おかめ”と一緒に仲良くその風景を眺めてみる。

 

 

現場では外壁下地設置の遅れを取り戻そうと各工種が入り乱れている。足場や資材で足の踏み場もなくなりつつある現場に焦燥と緊張感が漂う。場数を踏んできてた職人にとっては当然のことと思うが、その雰囲気の中でも集中し、他工種と様々な意思疎通を測りながら作業を行っていた。「彼らは飯が食えればいいんだ」と、下積時代のボスに言われたことを思い出す。その通りだが、できるなら「美味い飯」を食ってほしいものだとその時感じた。しかしそれはとても大それたことだと今になって思う。今はただ、このプロジェクトに関係する人が何千何万もいて、その方々のおかげで工事が進んでいることに思いを馳せ実感し、謝恩の気持ちを忘れず自身の立場を全うすることが肝要である、と改めて思う。